家族 (民事)信託について
この方法は、新たな相続として注目されていますが、家族信託についての
基本と利点の説明。
信託とは、
①委託者(財産の所有者)が、受託者(財産管理を行う方)に委託者の財産を移転し、
②受託者は、その財産を委託者との約束で決めた内容にしたがって財産の管理処分をし、
③受益者(財産や利益を得られる方)に配分する、
という仕組み。
そして、家族の間で信託契約が行われるものが家族(民事)信託。
例えば、「親が元気な間に財産の名義を子に移しておきたいが、その財産を親の利益の
ために使ってほしい場合、親(委託者・受益者)、子(受託者)にする」もので、
老後の資産管理を安心して子に任せることができるし、
税務上も受託者ではなく受益者が信託財産を有しているとみなされるため、
原則として贈与税や相続税は移転があった場合に課せられることになる。
利点として、以下のものが言われている。
①贈与税をかけず、子に財産管理を移転することができる。
②信託契約を結ぶと同時に効力が発生するので、迅速な対応ができる。
③遺言書を書くことについて気が引ける方は、信託契約を結ぶことで代用することができる。
④委託者や受益者に意思能力がなくなっても、受託者は確実に利益を渡すことができる。
⑤高齢者が詐欺の被害者になる危険を防止することができる。
※なお、この利点を生かすため、信託契約は公正証書で作成することが推奨される。
家族信託の5つの利点(さらに細かく…)
1. 家族信託で本人の体調・判断能力に左右されない財産の管理処分が実現できる。
(認知症による資産凍結対策)
本人の元気なうちから財産管理を託せるとともに、託した後に本人の判断能力が
低下・喪失して も、“本人の意思確認手続き”が本人に対して行われないので、実質的に
“資産凍結”されることなく、財産管理の担い手たる子(受託者)主導で、財産の管理や
処分がスムーズに実行できる。
具体的には、家族信託を事前に組んでおくことで、老親が入院・入所したために空き家
となった自宅を、適切な時期に適正な価格で受託者が売却できる。
2. 家族信託で成年後見制度の代用としての柔軟な財産管理が実行できる。
(成年後見制度の代用による自由かつ軽負担な財産管理)
1)成年後見制度は、下記3点においてデメリットがある。
①家庭裁判所(後見監督人が選任されている場合は後見監督人)への定期的な報告
義務の負担が重い。
②後見監督人が選任された場合の後見監督人報酬の負担(月額1~2万円程度)が
ずっと続く。
③成年後見人ができるのは、家族ではなく本人にとって利益であることが必要。
2)家族信託による財産管理は、本人の希望・方針及びそのために付与する権限を
きちんと信託契約書の中に残しておけるので、本人の希望に即した柔軟な財産管理
・積極的な資産の有効活用を実行できる。
具体的には、成年後見制度の利用下では実行できない資産の組換えの実行も、
本人の健康状態に左右されずに相続発生のギリギリまで継続できる。
※資産の組換えの例
・老朽化した賃貸物件の建替え
・不動産の買換え
・遊休不動産の開発
・借入れによるアパートの建設
3.家族信託で【遺言の機能+受遺者の財産管理】が実現できる。
(遺言代用+受遺者の財産管理)
本人の死亡により遺産を受けた人が既に財産管理の能力が無い場合、その受遺者に
成年後見人を就けて、財産管理を担ってもらう必要がある。
しかし、家族信託の場合、
①本人死亡後の財産の承継者を家族信託の契約書の中で指定できる
②本人が亡くなった後も引き続き受託者の下で、財産の管理が可能。
例えば、高齢のご主人が亡くなった後に遺される認知症の妻がいるとすれば、
引き続き信託の仕組みの中で、妻の生涯にわたる財産管理・生活資金をサポート
することができる。
4.家族信託で自分の思い通りの資産承継の道筋が実現できる
(争族・遺留分・資産承継対策)
①2次相続以降の資産の承継先まで自分で指定することもできる。
自分の希望する順番で何段階にも資産承継者(受益者)の指定が可能。
②1次相続による資産承継者(高齢の配偶者など)が認知症や障害により、遺言等で
次の承継者を指定できない場合に、その人に代わって資産承継者を指定できる。
→後々の遺産分割協議による争いの余地を排除できる。
5.家族信託で不動産の共有回避や共有不動産の塩漬け予防が実現できる
(不動産の共有回避策・共有不動産のトラブル回避策)
不動産の共有状況が発生する場合、共有者全員の同意が得られなくり、不動産の
有効活用・処分できなくなるリスクを回避できる。
以上、家族信託の利点を説明しましたが、リスクもあるため、注意点については次回。
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