趣旨:消費者契約法は事業者対消費者という立場の不均衡からくる消費者への不利から消費者を救い、
健全な契約が締結されることを目指している。
1.従来から、契約を規律する、消費者を保護するために、民法においては「詐欺」、「脅迫」、「錯誤」
による契約に対しては救済措置が規定されているが、消費者契約法はより一層、消費者にとって有利と
なるような規定がされている。以下具体的に各内容を列挙する。
2.まず第1に、要件が緩和されたこと。
例えば、民法における「詐欺」には、要件として故意を立証することが求められているが、
消費者契約法においては、故意・過失は問題とされないか、あるいは緩和されている。
脅迫についても同様に要件が緩和されている。
民法上の「脅迫」=基本的に物理的な圧力に基づく行為であるが、
消費者契約法においては、物理的だけでなく心的なプレッシャーをも含む(第4条3項)とされている。
3.第2に、取消についても、遡及効果が認められている。
1)民法においては、サービスが提供されていれば、該当する分の代金支払いが要求されているのに対し、
消費者契約法では支払いが免除される。
つまり、サービスを先に無理やり提供し、その分だけでも支払いを受けようとする事業者に対しても、
支払いをする必要がなくなった。
2)ただし、このように消費者有利な規定が設定されていることから、
「取消の時効は困惑の場合は困惑状態から脱することができた時から6ヶ月、あるいは契約締結時から5年」
とされていて、意思表示から20年以内であれば取消が認められている民法の詐欺・脅迫の場合と異なる。
3)原状回復義務の発生=サービスなど返還できないものであれば、該当分については代金を支払う。
原状回復が困難な場合、たとえサービスを享受したとしても、代金返却の必要なし。
4.第3に、不当条項の無効となる契約条項について、具体的にどのような条項が該当するかを明示している。
民法のもとでは、信義則にもとづいて個別に判断されていたが、
具体的に提示されることによってどのような条項が違反となる可能性が高いのかが分かりやすくなった。
5.消費者契約法の内容
1)消費者契約法は大きく2つの効果を発揮する。
契約の解約と不当条項の無効の効果の2点。
契約の解除…自分が不本意な契約をしてしまい、その契約から開放されたいときの手段となるもの。
不当条項の無効…事業者にとって有利になる条件付の契約を無効にする効果。
たとえ契約の中に事業者有利となる条項が含まれていたとしても、それが効力を
持たないようにするための条項。
以下は、それぞれがどのように消費者契約法で規定されているのかについての説明
2)契約の解約
消費者(購買者)による契約の解除を申し込むことができる場合は消費者契約法第4条に規定されている。
①事業者が契約の重要な事項について偽りを述べた場合、または、
②事業者から不確定要素について断定的な判断がなされた場合で、
それによって消費者が誤解をした場合。
③メリット・デメリットがある賞品に対してメリットのみを伝え、デメリットについては述べない
ような場合。
④事業者が撤退しないために契約を結ばざるを得なかった場合、
⑤撤退したい意思を表示しているにもかかわらず、開放させてもらえないがために契約を結んだような場合
消費者が事業者の行為によって困惑したような場合→契約の解約が可能。
3)不当条項の無効
契約の内容に、事業者に有利な、あるいは消費者にとって不利益となるような条項を入れることは消費者に
とって不利な契約となる。消費者契約法第8条以下では、無効とされる契約の具体例を提示している。
あ)損害賠償責任の全部または一部を免除する免除条項は認められない。
①債務不履行の場合の損害賠償の全部、
②または一部、
③債務履行の際の不法行為による損害賠償の全部、
④または一部、
⑤契約物に隠れた瑕疵があった場合→損害賠償免除条項が認められない。
い)消費者契約法第9条では、契約解除や履行遅滞の際の事業者への損害賠償、違約金の規定について
一定の規制を設けている。
⑥契約の損害賠償、違約金が同種の他の契約に比べて著しく逸脱している場合、
⑦購入者が代金を期日に間に合わずに遅延した場合
→超過した日数×14.6%以上の割合の遅延損害金を課すような条項が禁止されている。
第10条では、その他消費者を不利にさせるような条項について、広く公正に判断して
無効になる可能性が明記されている。
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