1.管理会社が管理組合に組合員名簿を見せない理由
区分所有法第48条の2では区分所有者名簿の備え置きの義務規定があり、 これを組合員名簿公開の
法的根拠とする意見がある。
しかし、この区分所有法第48条の2の規定は、 管理組合の債務に対する区分所有者の責任を明らか
にする目的で置かれた規定であり、 組合員全員に開示しなければならない義務、若しくは開示しても
個人情報保護の責任から除外免責される等の規定ではない。
2.平成27年改正個人情報保護法の成立によって、明文化された事項がある。
① 管理組合も個人情報取扱事業者になった。
② 個人情報取扱事業者は情報の取扱いに関して個人データの安全管理が図られるよう委託先を監督
する義務を負う(新22条)
③ 委託先の管理会社は「情報提供を受ける第三者」には該当しない。(新23条第5項第1号)
委託先の管理会社への名簿提供は本人の同意を必要としない。
④ 組合員本人には当該本人の保有個人データの開示請求権があり、本人から請求があれば管理組合
は遅滞なく、 当該保有個人データを開示しなければならない。(新28条)など。
3.改正個人情報保護法では、管理組合は自らの管理業務のために区分所有者及び居住者の名簿を作成し、
それを管理会社との委託契約の際に、 個人情報管理委託契約を締結した上で、名簿受渡し記録を作成し
て名簿を渡し、場合によっては管理会社が会計業務を再委託している先まで立入って名簿の管理状況を
監督しなければならない責務を負っている。
委託先の管理会社だけではなく、管理組合内部においても個人情報にアクセスできる権限をもつ者を
限定し、 個人情報の保管・管理方法にも厳重なセキュリティが要求される。
個人情報はみだりに公開してはいけない。 しかし、管理組合の業務を遂行する上で必要な個人情報
は、管理組合の責任のもとに、本人の同意を得て収集し、名簿作成、保管、利用に関しての規則に則り、
適正に管理されなければならない。これが個人情報保護法の基本的な立法趣旨だからである。

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