1.従来(現在)の契約締結
契約内容の合意→契約書作成→印刷(自社・先方の2部)→製本→押印→封入・郵送
→先方到着→内容確認→先方が押印(2部とも)→1部のみ返送→両社の押印がされた
契約書が1部到着→内容確認後、ファイリング→契約完了して保管。
△相手方の郵送や返送に非常に時間がかかるケースが多く、契約書が手元に戻るまで
最大2〜3週間かかってしまう。
➡電子契約では返送や郵送の必要がなく、内容の変更が起きたとしても
スピーディーにやり取りできる。
2.「電子署名」と「タイムスタンプ」とは
電子契約でポイントとなるのが「電子署名」と「タイムスタンプ」で、電子契約書に
法的効力を持たせるものとして必須。
1)電子署名とは
電子サインの一種である電子署名とは、従来の契約書における押印または署名に
置き換えられるもので、電子署名法によって「押印または署名と同等の法的効力を
持つものである」と定められている。
・従来の押印を単に、スキャンして契約書に取り込む方法では、改ざんや不正が
行われる可能性がある。
→秘密鍵や公開鍵といった仕組みを持つ電子署名により、正式に認証された
契約書として、法的な効力を担保できるようになる。
・電子署名を利用するには、事前に認証機関へ届け出て自身の「秘密鍵」を取得
しておく必要がある。
そして、これをもとに「電子署名生成プログラム」で、電子署名という「公開鍵」
を生成してPDFに埋め込む。
2)タイムスタンプとは
電子署名が埋め込まれただけの状態では、「いつ契約書に署名が行われたか?」と
いう状態が判断できない。
そのため、電子署名とそれが行われた時間であるタイムスタンプを同時に埋め込む
必要があり、データ通信協会の認定を受けた、正確な時刻を管理できるサーバーに
よるタイムスタンプが使用されることが必要。
→電子署名とタイムスタンプによって法的な効力が担保される。
3.電子契約の(契約書としての)有効性
電子契約では以上の法律を根拠とし、要件にあわせた手順を踏むことによって法的な
有効性を担保しているが、実際には契約書を交わすことは契約締結に必須ではなく、
口約束でも契約は成立する。
しかし契約締結によって、民事裁判に発展してしまったケースでは法的効力を持つ
契約書が証拠書類となる。
従来は、署名、押印のなされた契約書が作成され続けていたが、電子署名やタイム
スタンプの埋め込まれた電子契約も、同様の効力を持つことになり、証拠書類とし
ての有効性を持った契約書と扱える。
4.電子契約が法的な効力を持つことの根拠となる法律
1)電子帳簿保存法
1998年7月に施行された法律で「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類
の保存方法等の特例の関する法律」が正式名称。
帳簿といった紙の会計記録は、従来、7年間の保管義務が求められているが、保管場所
にまつわる問題から、これを電子データの形で保管することを容認したもの。
・これを行うには、一定の要件を満たす必要があるが、電子契約においては「電子署名」
と「タイムスタンプ」が含まれている必要がある。
・帳簿や伝票などを「帳票」と呼び、作成・保存が義務付けられている。
2)電子署名法
2001年4月施行の法律で、正式には「電子署名及び認証業務に関する法律」
・直筆の署名や押印などに替わるものとして、電子署名が有効性を担保するものである、
と定めた内容になっている。
3)IT書面一括法
2001年4月に施行された法律で、正式には「書面の交付等に関する情報通信の技術の
利用のための関係法律の整備に関する法律」
・証券取引などに書面の手続きを義務付けていた各種規制が、電子商取引の阻害要因と
なっていたことから施行された法律で、送付される側の同意を前提に、契約締結の
書面を「電子メールやFAX」で行うことを容認するもの。
4)e-文書法
2005年4月に施行された法律で、正式名称「民間事業者などが行う書面の保存等に
おける情報通信の技術の利用に関する法律」および「民間事業者などが行う書面の
保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備
などに関する法律」の総称。
→これによって、商法や税法で保管が義務付けられていた文書を、電子化して保存
できるようになった。
5.電子契約の4つのメリット
1)コスト削減
電子契約は、従来の契約書と異なり、印紙を貼る必要がなくなる。
印紙税法によって印紙税の対象とされているのが、契約書や領収書などの紙の文書に
限定されているため、電子文書である電子契約は対象にならない。
→印紙を貼る必要のない電子契約では、数千円から数万円にもおよぶこともある
印紙代を削減できる。
2)業務効率化
従来の契約書締結プロセスでは、物理的・人的コストのほかに、郵送や返送にかかる
時間的なロスが生じていた。
また、契約内容を確認するために対象原本を探す時間が無駄だった。
データベース管理による素早い検索も可能
→時間的なロスをなくし、効率的に業務を遂行できるようになる。
物理的な文書の作成や郵送にともなうコストや、人的リソースの投入も排除でき、
相対的なコスト削減効果が期待できる。
3)コンプライアンス強化
従来の契約書の場合、保管や管理がずさんだと、改ざんされる可能性があり、盗難や
紛失のリスクがあった。
電子契約書では改ざんの危険性が低いばかりでなく、データベースで管理すること
からアクセス履歴も残しやすく、透明性も保たれるようになる。
電子契約による透明性は、監査の際にも有効に働く。
4)リスク分散
東日本大震災以来、事業継続計画(BCP)の重要性が見直されているが、クラウド
環境でサービスが提供される電子契約等は非常に有効。
SaaS型で外部データセンターを保存場所として活用すれば、リスク分散に大きな
効果を発揮する。
6.電子契約の課題と対応方法
実際に採用している企業が全体の14%だということからもわかるように、解決し
なければならない課題もある。
1)電子契約が不可能なケース
法律面の整備でも、JIPDECの活動でも電子契約が推進されているが、法的に
「書面での締結が義務付けられている契約」が存在する。
例:投資信託契約の約款、定期借地契約、労働条件通知書の交付など。
ただ、基本契約や秘密保持契約など、ほとんどの契約で電子契約は認められて
いるが、一応要確認。
2)電子証明書が必要
電子署名を実行するためには、認証機関へ届け出ることによって自身の身元
を確認すると同時に「自身の秘密鍵」を入手しておく必要がある。
電子署名自体が「署名を行う本人である」ことを証明するものであるため、
認証には住民票や戸籍謄本などを提出しなければならない場合も多く、
手数料も高いのは課題になる。
3)取引相手の理解
電子契約を採用することになっても、取引先に電子契約を強要できない。
場合によっては、自社が利用している電子契約システムに、取引先も加入して
もらう必要が生じ、結果的に相手方に負担を強いることになるかもしれない。
取引先に負担をかけないようなシステムの選定を行い、粘り強く相手の理解を
得ていくことが必要。
4)税務調査時の対応
企業を運営していくうえで避けて通れないのが税務調査であり、電子契約を
採用している企業が、税務調査時に気を付けるべきポイントは以下の通り。
①保管場所と期間
電子契約は納税地、事業所在地に保存することとあり、社内サーバーだけに
限られているわけではなく、社内からネットワーク経由で接続可能であれば、
他国のデータセンターに保管されていても問題なし。
保管期間に関しては、税法に基づくため、紙の文書と同様の期間が適用される。
②真正性の要件について
「電子署名およびタイムスタンプ」が施されている必要があり、内容の改ざん
がされないよう「正当な理由のない訂正及び削除の防止に関する事務処理規定」
がなされる必要がある。
具体的には、アクセス権制御による、書類の保護が必要になってくる。
③検索機能について
「文書の名称、金額、日付、相手方」で文書の検索ができることが前提となって
おり、金額・日付に関しては範囲指定しての検索が、2つ以上のアンド検索に
対応している必要がある。
④説明書の完備
税務調査にあたって、検索や電子署名、タイムスタンプの確認がスムーズに
行われるよう、電子計算機、アプリケーションなどのプログラム、ディスプレイ、
プリンターなどの説明書を準備しておく必要がある。
7.電子契約導入の勧め
電子契約の下記メリットを享受するため、電子契約のシステムを導入することが
お勧め。
①「印刷」「製本」「封入・郵送」「返送」「ファイリング」作業がなくなる
②印紙が不要になる
③郵送コスト、作成コストなどの削減
④契約締結の効率化
⑤電子署名とタイムスタンプによるコンプライアンス強化
⑥保管や管理のリスク分散
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