1.消費者契約法は、民法の原則である「契約自由の原則」を制限し、消費者契約において行われがちな
 不当な勧誘による契約の取消しや不当な契約条項の無効等を規定することで、消費者と事業者との間の
 「情報格差」を是正し消費者保護を図る法律。

2.消費者契約法は、平成13年(2001年)に施行された後、各種改正されている。
 ① 消費者団体訴訟制度を導入
 ②消費者団体訴訟制度の対象を景品表示法と特定商取引法、食品表示法に拡大。
 ③高齢化の進展等に対応し、消費者の取消権等を拡大。
 ④消費者と事業者の情報格差に加え「交渉力」の格差を解消するための改正。

3.今回の改正消費者契約法のポイント
 1)契約時の内容説明努力義務を明確化(第3条1項)
   事業者が、契約内容を消費者にとってわかりやすくし、かつ必要な情報を提供すべきとする努力義務が新設。

 2)不当な勧誘に基づく契約取消権の追加(第4条3項)
   ①進学、就職、結婚、生計といったライフプランに関わる重要事項
   ②容姿、体型その他の身体の特徴等に関する重要事項
    について、不安をあおって商品やサービスを売りつけた場合 
   ③デート商法」と呼ばれる、好意を抱いていると誤信させた上で関係断絶をチラつかせながら
    商品・サービスを売りつける商法
   ④契約前に事業者が商品・サービス提供を始めてしまう押し売り的な商法
   ⑤加齢又は心身の故障者に対し、生計、健康その他の事項に関し不安をあおる商法
   ⑥霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見で不安をあおる商法
    →消費者が契約を取り消すことができるようになる。
   ※これらの新しい不当勧誘規制の特徴として、「当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから」
    という要件が条文に定められた。

 3)契約が無効となる不当条項の追加(第8条1項、第8条の3)
   ①事業者が自分の責任を自ら決める条項、たとえば、「当社が過失のあることを認めた場合に限り、
    当社は損害賠償責任を負う」といった契約条項は、無効となる。
   ②認知症などの理由による消費者の後見等を理由とする契約解除の条項、例として「賃貸人が成年
    被後見人に該当した場合には、直ちに賃貸借契約を解除できる」といった契約条項が無効となる。

4.消費者保護法制の規制強化の流れは止まらない。
 1)これまでの消費者契約法の条文は、事業者の契約内容や勧誘の方法に対して広くあまねく網をかける
  抽象的な規定がほとんどだったが、今回の改正ポイントをみると、個別具体的なビジネス領域とその
  取引の手法に立ち入って規制を加えた法律に変容している。

 2)消費者契約法は、契約の基本原則を定める民法を上書きする特別法である。
  お互いの立場が対等、あるいはそれに近い状態であれば、交渉も可能だが、契約がいつも対等とは限らない。
  相手の顔が見えない、交渉の余地がない、無理やり押し付けられた、よく分からないから任せたら勝手に
  事が進んでしまった、というようなことは決して珍しいことではない。
  その様な力関係の不均衡から弱者である消費者を保護するための法律、それが消費者契約法。

 3)直近の5年間だけに絞って見てみると、この消費者契約法のみならず、
  ・景品表示法(平成25,26年改正)
  ・特定商取引法(平成26,28,29年改正)
  ・割賦販売法(平成26,28年改正)など、消費者保護法の改正ペースが加速してきている。
   今後も、消費者契約に関する問題が発生するたびに個別具体的な文言が追加され、
   規制が厳格なものになっていく流れにある。

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