1.「デジタル遺品」という言葉、近々注目を集めている遺品のひとつで、どうすれば
  いいのか悩んでいる人も増えている。
 1)デジタル遺品は、パソコンの中にもインターネット上にもある
   デジタル遺品とは、その名の通り、デジタルの状態で残された遺品を指す。
   ・ パソコンやスマートフォンに保存されている写真
   ・メール、アプリ、年賀状の住所録など
   ・ 手持ちの機器の中ではなく、インターネット上にあるもの・
     →SNSの日記やLINEのメッセージ、ネット銀行に預けている貯金など
 2)所在がバラバラで、何だかとりとめもないように感じてしまうが、デジタル遺品
  の定義は「デジタル環境を通してしか実態が把握できない遺品」。
    パソコンなりスマートフォンなりのデジタル環境を使って、表示したり利用した
  りするものと捉えると共通点が見えてくる?
   パソコンやスマートフォン自体も、物質的な普通の遺品になるが、 「持ち主が
  どんなふうに使って何を残したか」を把握するには電源を入れてデジタル環境を
起動する必要がある。

2.デジタル遺品の対応策は未整備の状態
 1)デジタル遺品は、本質的なところは従来の遺品と何ら変わりがないが、
  現実的には取り扱いが独特で、手の打ち方にコツがいることも確か。
 2)その原因は2つある。
   ひとつは、デジタルだからこその問題。
  ・デジタルデータの多くは無劣化でコピーできる一方で、ゴミを残さず消滅すること
   もある。
  ・パソコンで削除したと思ったデータと全く同じものがインターネット上で見つかっ
   たり、 逆に残そうと思っていたのに誤って端末を初期化(工場出荷時の状態に戻す
   こと)してしまったりということはよくある。
  ・セキュリティの鉄壁さもデジタル特有。
  ・ロックがかかったスマートフォンは、持ち主が設定したパスワードを入力しないと
   どうやっても開けないことがよくある。
  ・ポケットに入るサイズの機器なのに、銀行の地下金庫ばりの厳重さを備えている。
  ・孤独死の現場では玄関ドアの鍵を壊して室内に入ることが可能だが、そうした緊急
   措置ができない。

 3)もうひとつの原因は、デジタル遺品をとりまく環境がまだ未整備だということ。
   デジタル遺品に関しては、メーカーは機器自体の保証はしてくれても、中身はノー
  タッチ。 通信キャリアも対応してくれるのは契約の処理と端末の初期化だけ。 イン
  ターネットサービスのなかには、利用者の没後の措置についてルールを設けていない
  ところも多いのが実情。
   デジタルやIT業界で死後対応のガイドラインが整うのはもう少し先のことになる。
  そうなると、重要になってくるのがデジタル資産を持っている本人による事前準備
  =終活となる。
   デジタル資産の現状把握と整理は、 要点を押さえて対応すれば毎年10分程度の
  時間で十分な手が打てるため、以下の点が参考になる。

3.自分のデジタル資産の生前整理
 1)デジタル遺品で家族を困らせないようにする最大にして最も効率的な方法は、
  「持ち主がデジタルの資産をきちんと管理しておくこと」。
  自分に万が一のことが起こった際の備えをする、その決意が大切。
 2)見つけにくい資産ほど持ち主=上流側の管理が重要になる
   遺品整理の手間は、亡くなった持ち主が生前準備しているか否かによって
  大きな差が生じる。
   デジタル資産は物体的な資産よりも見えにくい(=デジタル環境を通して
  しか実態が把握できない) という特性から、その差が拡大する。
 3)デジタル資産の持ち主である本人が“上流”できちんと備えておけば、“下流”で
  しか触れられない家族たちに余計な苦労をかけずに済む。

4.生前整理の方法
 1)家族にとって重要なデジタル資産は黄色の「★」、それ以外は黒の「×」。
    Aパターンのように本人が何も考えずに残してしまうと、家族はすべてをかき集め
  て重要なものを探さなければならない。 
    Bパターンのように本人が家族のことを考えておけば、いざというときの家族の
  作業が大幅に楽になる。
 2)「機器」「お金」「人間関係」のリストアップ
   まずやるべきは、手持ちのデジタル資産のリストアップ。以下の項目を意識して
  書き出してみること。
   これは要所を把握するための作業なので、すべてのデジタル資産を網羅するような
  気構えは必要なく、箇条書きでどんどん並べていく感覚で。
   いわば『エンディングノート』に入力する前段階の作業といえる。
  ①デジタル機器・・・パソコン、スマートフォン、携帯電話、外付けHDDなど
  ②金融資産・・・ネット銀行やネット証券会社の口座、オンライン保険、暗号資産
        (仮想通貨)など
  ③支払い契約・・・月額や年額支払いの定額サービス、通信通話契約など
  ④仕事関連・・・社用データ、連絡先、SNSアカウント、メールのやりとりなど
  ⑤思い出関連・・・家族や友人と共通の写真、趣味のブログやSNSアカウントなど
  ⑥秘密にしたいもの・・・誰かに見られたら恥ずかしいもの、死後も隠しておきたいもの
 3)補足
  ・デジタル機器」は、デジタル資産の容れ物であり入り口でもある。
   →職場に置いてあるものも含めてリストアップする。
  ・「金融資産」と「支払い契約」は、直接お金が絡むもの全般。
    ただし、購入済みで追加料金の発生しないアプリや動画、およびネットショップ
    のアカウントなどは無視しても大丈夫。
  ・「仕事関連」と「思い出関連」は、周りの人間に関わるもの。
   →自分の持ち物であっても、「これ見られなくなったら困るだろうなぁ」と思う
    ものは何でも書く。
  ・逆に「秘密にしたいもの」は、周りの人間に関わらせたくない大切なものを
   まとめる感覚で。
  ・リストを作っていると、「このSNSは仕事用とプライベート用を兼ねているし、
   一部は家族に見られたくない内容もある・・・」 というように、項目分けに迷う部分も
   出てくる。
   →後から整理するつもりで、とりあえずは関係するそれぞれの項目に書き入れる。
  ・どれにも当てはまらないけれど、捨て置けないものがある場合
   →「その他」という項目を作ってメモしておく。
 4)最後に
   この作業は、やはりデジタル環境に親しんでいる人ほど手間がかかるし、完成度を
  追求するといつまで経っても納得しきれないかもしれないが、長くても1時間程度で
  まずは、済ませてること。
   その後に、修正点や思い出したデジタル資産が出てきたら、そのときに修正・追加
  すればいい。

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